評価ガイド: モダン BI と分析のプラットフォームの正しい選び方

組織に合ったプラットフォームを評価し選定するための基準

この評価ガイドは、IT 組織が全社的な大規模導入に適したモダン BI と分析のプラットフォームを評価し、選定できるように支援することを目的にしています。

セルフサービスベースのモダン BI モデルに移行するには、IT 部門は、計画全体のあらゆる側面でビジネス部門と連携した取り組みを採用する必要があります (「モダン BI の世界における IT 部門の新たな役割」をご覧ください)。このガイドは、モダン BI 計画において、プラットフォームの評価と選定という側面に重点を置いています。また、各プラットフォームにおけるモダン分析ワークフローを実行する能力を評価し、組織全体のユーザーが持つ多様なニーズに対応する際に、IT 部門がビジネスユーザーやアナリストと連携して利用するためのものです。

モダン分析ワークフローは、下図で示すような相互に関連した能力のサイクルであり、この評価ガイドの基盤となる 5 つの主要な要素で構成されています。

図 1: モダン分析ワークフロー

モダン分析ワークフローは IT 部門が実現するものではありますが、その推進の原動力となるのは組織全体のビジネスユー ザーとアナリストです。また、導入を成功させるには、あらゆる役割のユーザーの連携と関与が欠かせません。採用と大規模な 導入が可能なモダン BI と分析のプラットフォームを選定するには、評価プロセスの全体にわたって、組織は次の基本的で重要な特徴を考慮する必要があります。詳しくは、後述の「プラットフォームの考慮すべき重要な特徴」セクションをご覧ください。
プラットフォームの統合とアクセス性
使いやすさ
ユーザーイネーブルメント
導入の柔軟性
価格とパッケージ

このガイドは、次のようなタイプの中心的な役割を担い、評価を行う状況に関与する人物がいることを想定しています。
IT/BI プロフェッショナル – ソフトウェアのインストール、ユーザーのプロビジョニング、アクセス権、ガバナンスの監視、一部の開発タスク (コンテンツやデータソース) など、初期セットアップの全作業を行います。
コンテンツ作成者 – データ準備、自由形式の分析、コンテンツの利用拡大、データ検証など、コンテンツ作成作業の大半を行います。
情報利用者 – 主に、管理されたコンテンツや信頼されるデータソースにアクセスし操作しますが、既存のコンテンツのカスタマイズや既存のコンテンツを活用した新しいコンテンツの作成を行うこともあります。

本ガイドでは全体にわたり、分析ワークフロー内の各段階で中心となる役割を示します。これは、その人物がその評価段階で先導的な役割を果たすからです。しかし、プロセスの全体であらゆるニーズと懸念に対処するために、必ず評価の各段階で上記のすべての役割の人物の関与と意見を求めてください。

また、同じ人物が複数の役割を担っている組織もあるため、1 人が複数の観点からプラットフォームを評価することも珍しくありません。結局のところ、ビジネス分析へのモダンアプローチは、組織内の分析のイネーブラー (実現者)、プロデューサー (作成者)、コンシューマー (利用者) の区別がつかない (あるいはつける必要がない) 段階まで進化していきます。

モダン分析プラットフォームを総合的に評価するには、評価プロセスを開始する前に、次の作業を完了しておく必要があります。
評価に必要な Desktop/Server/クラウドソフトウェアのライセンス
コンサルティングサービス/導入パートナーの関与 (該当する場合)
役割の特定と評価作業の割り当て
IT/BI プロフェッショナル
コンテンツ作成者
情報利用者
クラウドデータソースとオンプレミスデータソースへのアクセス
環境の初期セットアップ
初期のユーザープロビジョニングとセキュリティ
モバイルデバイス (iOS、Android など)、スマートフォン、タブレットを利用できるかどうか

プラットフォームの考慮すべき重要な特徴

このガイドは主に、モダン BI と分析のプラットフォームを選定する際に重要になり、相互に関連する特定の能力を評価することに重点を置いています。しかし、次に挙げている技術的ではない重要な特徴も、モダン分析ワークフローを組織にうまく導入し実行するために欠かせないため、評価チームは必ず検討する必要があります。こうした特徴は、一体となってワークフローの個々の能力を結び付ける「接着剤」の役割を果たし、事実上の基盤となるため、最終的な決定において重大な要素となります。

プラットフォームの統合とアクセス性

モダン分析ワークフローの段階はいずれも、別個にモジュールや製品の間を移動しなくても、プラットフォーム内でシームレスに実行することができるか
モダン分析ワークフローの段階はいずれも、IT 部門の関与や専門のスキルを得なくても実行できるか

使いやすさ

BI プラットフォームの管理者は、プラットフォームのインストール、構成、管理を簡単に行えるか
コンテンツ作成者は、IT 部門から事前にまたは継続して支援を得なくても、データ準備とデータソースの整理を簡単に行えるか
コンテンツ作成者は、IT 部門から事前にまたは継続して支援を得なくても、簡単にコンテンツを作成しプラットフォームの分析機能を利用できるか
技術的な知識を持たないコンテンツ利用者は、利用可能な分析コンテンツを簡単に検索、表示、操作できるか
技術的な知識を持たないコンテンツ利用者は、簡単に、掘り下げた質問を自発的に行い、パブリッシュ済みの既存コンテンツを特定のニーズに合わせてカスタマイズできるか

ユーザーイネーブルメント

役割別のトレーニングが用意されており、すべてのユーザーが利用できるようになっているか
ユーザーが自分のペースで進められる、チュートリアルやオンラインセミナーは用意されているか
ユーザーは、各製品の疑問に対する回答を簡単に探すことができるか
ベストプラクティス、ヒント、テクニックなどを共有し学べる、信頼できるアクティブなユーザーコミュニティがあるか
テクニカルサポート問題の解決について、そのプラットフォームベンダーはどのような評判を得ているか
(ベンダーまたはパートナーを通じた) コンサルティングサービスは簡単に利用できるか
カスタマーサクセスや、顧客に対する継続的なエンゲージメントの実現について、そのプラットフォームベンダーはどのような評判を得ているか

導入の柔軟性

プラットフォームに柔軟な導入オプションが用意されているか (SaaS、パブリック/プライベートクラウドでの導入、オンプレミスなど)
プラットフォームにデータストレージの柔軟なオプションが用意されているか (インデータベースのストレージ、プラットフォームのストレージ (インメモリ) など)
プラットフォームは、オンプレミスとクラウドデータソースのハイブリッド型接続をサポートしているか
プラットフォームは、時間の経過とともに増加するデータ量とユーザー数に対応できるスケーラビリティを持っているか
プラットフォームで、組織のニーズに応じたスケールアップやスケールアウトを簡単に行えるか

価格とパッケージ

製品パッケージは理解しやすいか
用意されているライセンスオプションは明確で透明か
ライセンスオプションでは、価格に見合った機能と価値が提供されているか
プラットフォームの価格モデルは理解しやすいか
プラットフォームの価格モデルは柔軟で拡張性があるか

評価で中心的な役割を担う人物:
情報利用者 (利用)
IT/BI プロフェッショナル (管理)

IT 部門が主導していた従来のトップダウン型のアプローチから、セルフサービス型のアプローチへと組織が移行を始めると、IT部門 (または一元管理された BI チーム) にとって多くの場合、信頼されるデータソースの最初のセットと分析コンテンツを開発できるというメリットが生まれます。するとビジネスユーザーは、分析の出発点としてそのコンテンツにアクセスし利用することができます。時間とともに、モダン分析ワークフローの中で、ユーザーが自分の質問に自分で答えを出すよう促されるようになり、信頼でき利用できるコンテンツの範囲も自然に広がっていきます。そして、ユーザーは、さらに幅広いセルフサービスの分析コンテンツにアクセスできるようになります。なお、このセクションではエンドユーザーが利用できるコンテンツの出所は考慮していません。また、管理状態に関係するため、その評価基準もここでは考慮せず「利用拡大と管理」セクションで取り上げます。

このセクションの評価基準はまず、分析コンテンツの保存と保守、データソースの管理と監視が行われる集中型環境の管理責任を最終的に負っている、IT/BI プロフェッショナルの観点から見てみましょう。

評価基準:
IT/BI プロフェッショナルは、次のことを行える必要があります。
参照元データ更新の定義と変更を行い、ステータスを監視する
分析で利用する参照元データの保存先とアクセス方法を選択する
パートナーが提供する機能を利用できるようにプラットフォームを拡張する
利用できるコンテンツの利用状況を監視および監査し、影響分析を行う
パフォーマンス関連の問題を診断しチューニングする

評価時の検討事項:
分析コンテンツのリポジトリに一元的に保存されている各アイテムに対して、更新スケジュールを個別に設定し管理することができるか
データ更新プロセスの問題や障害を、特定の人物または役割に通知するよう設定できるか
分析プラットフォームで生成されたクエリを、データのある参照元データベースに渡すことができるか
パフォーマンスを最適化するために、分析プラットフォームのインメモリストレージまたは列指向ストレージにデータを取り込めるか
オンプレミスのデータには、クラウドに導入された分析プラットフォームからライブでアクセスできるか
プラットフォームでネイティブにサポートされていない分析機能を追加するために、API や SDK を使ってプラットフォームを拡張できるか
管理者は、特定のデータソースや利用できる分析コンテンツの利用状況を追跡し監査することができるか
管理者は、ダウンストリームのコンテンツやプロセスに対する変更案が影響を及ぼす範囲と重大度を判断するために、影響分析を行えるか
パフォーマンス関連の問題を管理者が特定、診断、解決するためのユーティリティは、プラットフォームに用意されているか

このセクションで検討する 2 つ目の観点は、情報利用者から見たものです。情報利用者は、IT/BI プロフェッショナルが責任を持って失敗なく提供することになる、具体的な利用要件とパラメーターの設定を推進します。

評価基準:
情報利用者は、次のことを行える必要があります。
キーワードまたはトピックを使って、リポジトリで既存のコンテンツを検索する
指標や KPI がしきい値を超えた場合、またはある条件に合致した場合の、アラートと通知を設定する
関連コンテンツへのサブスクライブと、更新や通知の設定を行う
希望するどのような形態のデバイスからでも、分析コンテンツにアクセスし表示する

評価時の検討事項:
ユーザーは、他のユーザーがすでに作成し、ビジネス上の質問に答えを出すために役立つ可能性がある、利用可能なコンテンツを検索し表示することができるか
分析コンテンツまたはデータソースが認証済みで信頼されているものかを、ユーザーは簡単に判断できるか
ユーザーは、ある特定のデータ要素の参照元データを詳しく理解するために、フィールドレベルのメタデータにアクセスして表示できるか
ユーザーは、通知を送信するよう設定するためのデータドリブンまたは静的なしきい値を定義できるか
ユーザーは、関係するアラートや通知の送信手段と送信先を指定できるか
ユーザーは特定のコンテンツをサブスクライブし、更新またはコンテンツのサブスクリプションに影響するその他のイベントが発生した後に通知を送信するように設定できるか
ユーザーは、どのようなデバイス (スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなど) からでも、分析コンテンツを検索しアクセスできるか
ユーザーはオフライン表示用に、モバイルデバイスから分析コンテンツにアクセスしダウンロードすることができるか

評価で中心的な役割を担う人物:
情報利用者

操作の段階は、分析ワークフローで最初の「アクセスと表示」の段階の延長にあります。情報利用者は、コンテンツのパブリッシャーによりあらかじめ設定された一定の限度で利用できるコンテンツを用いて誘導形式の分析を行う必要があります。このセクションの評価では、情報利用者の観点から、次の検討事項に重点を置かなければなりません。

評価基準:
情報利用者は、次のことを行える必要があります。
ビジュアルインターフェイスを使った直接的な操作により、分析のスコープを変更する
より深く分析するために、コンテンツ作成者が提供するコントロールを利用する
利用できるコンテンツを操作するために検索機能を利用する
希望するどのような形態のデバイスからでもコンテンツを操作する

評価時の検討事項:
ユーザーは、プラットフォームのネイティブの機能を使って、インタラクティブに分析のスコープをコントロールできるか。視覚的な操作の流れの中で直接コントロールできる程度を判断するには、次の項目を評価する必要があります。
ユーザーは、定義済みの階層またはカスタムに作成された階層を使って、ドリルアップとドリルダウンを行うことができるか
ユーザーは、視覚的な操作のプロセスを通じて特定された、単数または複数の具体的なデータポイントのみに対して分析を行えるか
ユーザーは、視覚的な操作のプロセスを通じて特定された、単数または複数の具体的なデータポイントを除外できるか
ユーザーはパラメーターを操作して、分析のビューを変更できるか、または What-if 分析/シナリオのモデリングを行えるか
ユーザーは分析のスコープを変更するために、表示されているフィルターコントロールを操作できるか
ユーザーはキーワード検索でフィルタリングを行い、分析のスコープを変更できるか
ユーザーは、自然言語によるクエリを実行して、利用できる分析コンテンツを操作できるか
ユーザーは、デバイスの種類にかかわらず同じレベルの操作を行えるか

分析と発見

評価で中心的な役割を担う人物:
情報利用者 (信頼されるデータソース)
コンテンツ作成者 (新しいデータソース)

モダン分析ワークフローのこの段階では、ユーザーのニーズが幅広く、プラットフォームはそうしたニーズにシームレスに対応することが欠かせません。チャートの作成に用いられるデータ視覚化ツールと、ビジュアライゼーションを分析の主なメタファーとして用いる高度なビジュアル分析ツールの差が明らかになるため、この段階はワークフローの中でもとりわけ重要です。ユーザーがダッシュボードを操作し新しい質問を投げかけていくと、既存のダッシュボードによる誘導形式の操作の限界に達して、ユーザーは必ず障壁にぶつかります。そのような状況になったとき、ユーザーには、新たに思いついた質問に独立して自立的に答えを出すための枠組みが必要です。そして、あらゆるスキルレベルのユーザーが、スイート内の別のモジュールや製品に切り替えずに分析の流れに乗ったまま、「分析しながら視覚化」し、プラットフォームの分析機能を利用できなければなりません。

また、プラットフォームの統合と使いやすさについては、本書の「プラットフォームの考慮すべき重要な特徴」セクションで詳しく取り上げられていますが、この段階で検討することが最も重要です。「操作」の段階から「分析と発見」の段階への移行では、次のレベルの質問を投げかけるために必要なプラットフォームコンポーネントの全体的なつながりが欠け、分析ワークフローが途切れることもよく起こります。

初めに検討すべきシナリオは、利用できるどのダッシュボードでも対処できない新たな質問をした、情報利用者の観点から見たものです。以下は、このシナリオの評価において重視すべき検討事項です。

評価基準:
情報利用者は、次のことを行える必要があります。
コンテキストがより豊富な分析を自律的に開始するために、ダッシュボードの情報源となる信頼されるデータソースにアクセスする
信頼されるデータソースのリポジトリを検索し、分析を補強するために利用できる整理されたデータセットを特定する
自身のニーズに合わせてカスタマイズするために、信頼されるソースのデータモデルを拡張する

評価時の検討事項:
ユーザーは実際に稼働されているダッシュボード内から、ダッシュボードが情報源にしているデータセットを使って、新しい分析を開始できるか。プラットフォーム内の異なる製品やモジュールを使わずに、データソースに含まれているあらゆるデータ要素を、セルフサービスで探索し分析できるようにする必要があります。
ユーザーは、分析で利用できる実稼働データソースのリポジトリを参照または検索し、選択したデータソースから新しい分析を開始できるか。成功の基準は前の段階と同じですが、唯一異なっているのは、分析が既存のダッシュボードではなく、データソースから開始されるという点です。
ユーザーは、信頼されるデータソースに一度接続すると、分析とコンテンツ作成の流れの中で既存のデータモデルを変更し補強することができるか。これは、プラットフォーム内の異なる製品やモジュールではなく、分析のコンテキストで行われるべきものであり、次の各項目に対処されている必要があります。
ユーザーは、分析に必要な新しいディメンションとメジャーを作成するために、既存のデータモデルを拡張できるか
ユーザーは、分析をスムーズに行えるようにするために、関連するデータポイントをデータモデル内の新しいフィールドに組み合わせてグループ化できるか
ユーザーは、関心のある具体的なデータポイントを選び、さらに分析を進めるためにデータモデル内に動的に保存できるか
ユーザーは、自身の分析ニーズに合わせて、データモデルに変更を加えカスタムのドリルパスや階層を作成できるか
ユーザーは、分析プロセス中に表面化した、データに関する問題をインタラクティブに修正できるか。これには、NULL 値の扱い方と、一貫性を保つための値のグローバルな名前変更や置換が含まれます。

必要に応じて分析ワークフローを補強するために、次の項目を使って、製品の中で利用できる分析支援機能の幅広さやきめ細かさを評価してください。
ユーザーは発見のプロセス全体で、選択した分析手段に基づく最適な推奨ビジュアライゼーションを提示されるか
ユーザーは、製品の中で用いられている基盤のモデルやアルゴリズムを必ずしも理解または利用しなくても、高度な分析機能を使って分析を拡張できるか
ユーザーは必要に応じて、高度な分析で用いられている参照元の統計の詳細データを取得し、さらに深い分析および検証のためにその情報を求めることがある上級ユーザーと共有することができるか
フィールドレベルのメタデータは分析プロセス全体でアクセスできるか、必要に応じてユーザーが更新し補強できるか

検討すべき 2 つ目のシナリオは、利用できるどのダッシュボードや環境内の信頼されるどのデータソースでも対応できない新しい質問を抱える、コンテンツ作成者の観点から見たものです。以下は、このシナリオの評価において重視すべき検討事項です。

評価基準:
コンテンツ作成者は、次のことを行える必要があります。
まだ信頼される状態にないデータを取り込み、形式変換、クリーニング、モデル化して、分析で使用できるようにする
新しいインサイトを探索し発見するために、信頼されるデータと信頼されていないデータを組み合わせて新しいデータソースを作成する
共有し利用拡大する新しい分析コンテンツを作成するために、既存のデータソースと新たに作成されたデータソースを利用する
発見と調査から新たに得た結果に基づいて、既存の分析コンテンツに変更を加える
情報利用者によるさらに幅広い利用を促進するために、誘導形式の分析を行えるようにする

評価時の検討事項:
ユーザーは、その時点で一元管理されていないデータソースに接続できるか
プラットフォームは、取り込みや分析のために構造化データソースおよび非構造化データソースに接続できる、幅広い接続オプションを持っているか
ユーザーは、視覚的な方法で、多種多様なデータへアクセスし、データを結合、クリーニングするデータ準備フローを実行、エクスポート、繰り返すことができるか
コンテンツ作成者は、信頼されていない新しいデータソースに対して、情報利用者のセクションに記載された分析と発見の全タスクを実行できるか
ユーザーは、参照元データの構造や読み込みプロセスを変更せずに、信頼されるデータソースを仮想的に拡張できるか
ユーザーは新しいデータソース、または信頼されるデータと信頼されていないデータが混在するデータソースを使って、新しい分析コンテンツを作成できるか
ユーザーは、変更の履歴を共有し追跡するために、管理されたコンテンツから別バージョンのコンテンツを作成できるか
ユーザーは、ダウンストリームに影響を及ぼさずに新たに作成または拡張されたソースを使用するために、管理された分析コンテンツの参照元データへの接続をリダイレクトできるか
ユーザーは、操作を容易にし、より幅広い情報利用者を誘導できるようにするために、プログラミングによるコントロールを分析コンテンツに組み込めるか
ユーザーは、他のコンテンツの作成で利用するための、スタイルシートやデザインテーマを作成し保存できるか

評価で中心的な役割を担う人物:
コンテンツ作成者
IT/BI プロフェッショナル

コンテンツ共有の手段は進化しました。従来の BI プラットフォームでの共有とは、印刷またはエクスポートされた静的なレポートを、メールの受信箱やユーザーのデスクに届けることを意味していました。しかし、分析への最新アプローチにおける共有では、あらゆるビジネスツールで当たり前になったコラボレーションが実現し、ソーシャルインタラクションの要素も含まれるようになっています。この移行を促進しているのは、レポートが印刷またはエクスポートされたその瞬間から情報は古くなる、という単純な事実です。そしてそれは、最新の情報を求める今日の利用者のニーズに沿っていません。コンテンツ共有には、情報をユーザーに幅広く利用できるようにするという側面がある一方で、分析プロセスの中心的な要素としてコラボレーションが必要であるという側面もあります。そのため、このセクションの評価基準では、このシナリオがどちらも取り上げられています。

初めに、幅広いユーザーに情報を利用できるようにするプッシュモデルを見てみます。従来のアプローチとの類似点は確かにありますが、モダンプラットフォームでは、組織が社内外の広範なユーザーに対し情報を幅広く利用できるようにする必要もあります。そのためのタスクの大半は IT/BI プロフェッショナルの担当領域にあり、その観点から次の基準を評価する必要があります

評価基準: IT/BI プロフェッショナルは、次のことを行える必要があります。
組織全体で使われているあらゆる形態のデバイスにコンテンツを配信する
アクセスとコンテキストに合わせた利用を拡大するために分析コンテンツを埋め込む
社外からアクセスと利用を行えるようにする

評価時の検討事項:
分析コンテンツは、組織全体で利用されている可能性があるあらゆる形態のデバイスで表示して、環境にアクセスできるようになっているか。これには、タブレット、スマートフォン、ノートパソコン、大型ディスプレイなどが含まれます。
分析コンテンツは、ユーザーが通常のビジネスプロセスの一環として利用する、組織の Web ポータルやアプリケーションに埋め込めるか
分析コンテンツは、企業のファイアウォールの外にいる社外の利用者と共有できるか

2 つ目のシナリオは、信頼されるコンテンツと信頼されていないコンテンツの両方が 1 対 1、ワークグループ、全社規模で議論され、検討され、検証される、本来の意味におけるコラボレーションです。コラボレーションは、新しいインサイトを引き出すプロセス、そしてガバナンスのプロセスで利用する情報源として欠かせない段階となる必要があります。このシナリオに主に関わるのはコンテンツ作成者であり、その観点から次の基準で評価を行います。

評価基準: コンテンツ作成者は、次のことを行える必要があります。
分析コンテンツの作成と検証で、他のユーザーとコラボレーションを行う
ソーシャルメディア形式のディスカッションで、発見した結果に注釈を付け意見を交わす
特定のコンテンツタイプやコンテンツ作成者をフォローする
特定の分析コンテンツで質の評価を行う
発見した結果やインサイトを共有するためのストーリーボードを作る
説明のためのストーリーを追加して、ビジュアルコンテンツの補強と拡張を行う

評価時の検討事項:
組織全体のユーザーは、発見した結果について議論と補完を行うために、共有コンテンツでリアルタイムにコラボレーションできるか
ユーザーはどのような形態のデバイスからでも、注釈とコメントをコンテンツ内に直接付けられるか
ユーザーは、ディスカッションの履歴を追跡するためにタイムラインでディスカッションを見られるか、議論されているコンテンツでコメントが追加された時点のスナップショットを表示できるか
ユーザーは、組織内の特定のユーザーをフォローし、そのアクティビティについて更新情報や通知を受け取れるか
ユーザーは、特定のトピックやコンテンツタイプをフォローして追跡し、基準を満たす新しいコンテンツがパブリッシュされた際に更新情報と通知を受け取れるか
ユーザーは、評価システムまたはソーシャルメディア形式の「いいね」を使って、コンテンツを評価できるか
ユーザーは、他のユーザーに分析の過程を示すために、発見した結果に至る論理的な道筋を示すストーリーを作成できるか
ユーザーはプラットフォームの機能を用いて手動または自動で、説明のためのストーリーを組み込んで分析内のビジュアルコンテンツを補強することができるか

評価で中心的な役割を担う人物:
IT/BI プロフェッショナル (管理)
コンテンツ作成者 (利用拡大)

ガバナンスへのアプローチには、さまざまな種類があります。また、IT 部門が主導する高度に管理された環境から、管理がほとんどあるいはまったくされていない環境までの範囲で、組織はそれぞれ異なった状況にあり、ほとんどはその中間に当てはまります。さらに、同じ組織の中でも、ガバナンス面のユーザーのニーズやデータ自体に応じて、ガバナンスの要件が変わることも珍しくありません。

モダン分析プラットフォームを選定する際に重要なのは、ビジネス部門が持つさまざまなニーズを満たし、拡張するのに応じてガバナンスのニーズも確実に修正できるようにするために、柔軟性を考慮することです。組織では、まず従来の形でモダンプラットフォームを利用し、その後セルフサービスでユーザーが利用できる機能の範囲を徐々に広げていくという方法で、従来のプラットフォームからモダンプラットフォームへの移行を促すことを選ぶ場合があります。また同様に重要なのは、独立しながらも関連し合っている、データガバナンスと分析環境のガバナンスの構成要素 (下図を参照) で、プラットフォーム独特の機能を評価することです。その目的は、最も適切なガバナンスモデルを導入し必要に応じて時とともに調整するために、プラットフォームが十分な柔軟性を持っていると確認することにあります。

図 2: データガバナンスと分析環境のガバナンスを組み合わせた全体の枠組み

モダン分析環境における大多数の使用事例では、セルフサービスに基づいたガバナンスへの自然なアプローチは、利用の拡大、より詳細なインサイトの取得、ビジネス成果の改善につながります。そのため、このアプローチこそが、本評価でまず考慮しなければならないものです。また、このアプローチで、ガバナンスのプロセス全体を取り決め実行することに最終的な責任を負うのは、本ガイドで「情報スチュワード」と呼ばれる一部のコンテンツ作成者です。

以下のセクションでは、コンテンツ作成者や IT/BI プロフェッショナルの観点から、データガバナンスと分析環境のガバナンスの両側面を検討します。

組織のガバナンスの枠組みを定義し、コンプライアンスを確認するタスクは、コンテンツ作成者と IT/BI プロフェッショナルが連携して主な責任を負うものであり、したがってその観点からデータガバナンスに関わる次の項目を検討する必要があります。

評価基準: コンテンツ作成者は、次のことを行える必要があります。
分析で利用されているデータモデルを定義、管理、変更する (データソース管理)
ユーザーに対して、フィールドレベルのメタデータを自律的に定義、変更、提示する (メタデータ管理)
パブリッシュ済みのデータモデルに適用される、データクレンジングとデータ拡張の規則を一元的に捉えて提示する (データ拡張とデータ品質)
一元的に定義されたデータモデルの使用状況に関する指標を監視し追跡する (監視と管理)

評価時の検討事項:
データスチュワードは、組織全体で幅広く利用されるように、記録のシステム環境にデータモデルをパブリッシュできるか
パブリッシュ済みのデータモデルは、利用拡大プロセスを通じて、検証されたユーザー定義フィールドで補強できるか
データスチュワードはウォーターマークを使って、信頼されるデータモデルに物理的なマークを付けられるか
パブリッシュ済みのデータモデルは、ダウンストリームのコンテンツにもユーザーにも影響を与えずに、他のソースやデータ要素で仮想的に拡張できるか
影響評価は、データモデルの変更に先立って実施することができるか
コンテンツ作成者は、パブリッシュ済みデータモデル内のディメンションやメジャーに、説明のためのメタデータを追加し変更できるか
パブリッシュ済みのデータモデルを作成し追加するために使用されたビジネスルールとデータ変換は、エンドユーザーに対して公開することができるか
データモデルの変更は追跡して監査し、必要に応じて元に戻すことができるか
データスチュワードは利用状況の統計情報にアクセスし、データモデル属性の重複、不一致、不使用などを確認するためのプラットフォーム機能を利用できるか

ガバナンスのプロセス全体を管理し実施するのは、主に IT/BI プロフェッショナルの責務であり、したがってその観点からデータガバナンスに関連する次の項目を検討する必要があります。

評価基準: IT/BI プロフェッショナルは、次のことを行える必要があります。
パブリッシュ済みのデータモデルに対し、セキュリティのパラメーターとアクセス制御を設定する (データセキュリティ)
遵守とデータ資産の適切な利用を確認するために、利用状況を監視して監査する (監視と管理)
異なる部門や情報スチュワードの間で一貫性を確保するために、必要に応じて新しいデータモデルを作成する (データソース管理)
組織の包括的なデータ戦略に従う (データソース管理)

評価時の検討事項:
妥当な場合、セキュリティはソースシステムから継承できるか
管理者は、各データソースに対して、ユーザーレベルやグループレベルでのアクセスを許可/拒否できるか
ユーザーが各データソースでデータのサブセットにアクセスできるようにするために、アクセス権を行レベルで設定することが可能か
管理者は、共有データソースを作成、編集、利用拡大できるユーザーを管理するために、各ユーザーに対してシステム内の特定の役割や権限を設定することが可能か
管理者は、システム全体の利用状況を追跡し分析できるか
管理者は環境をシステム全体で見て、各情報スチュワードが管理しているデータモデル全体で重複や不一致を見つけ出すことができるか
管理者は新しいデータソースを作成し、既存のソースの代わりに参照するよう、ダウンストリームのユーザーや分析コンテンツをシームレスに切り替えることができるか
管理者は組織のリファレンスアーキテクチャに基づいて、分析プラットフォームが必要とする、最も適切なデータストレージ戦略を決定できるか
API や SDK を使用したプログラミングによる管理タスクの自動化が可能か

組織のガバナンスの枠組みを定義し、それを遵守するタスクはコンテンツ作成者の中心的な責任です。したがってその観点から分析環境のガバナンスに関わる次の項目を検討する必要があります。

評価基準: コンテンツ作成者は、次のことを行える必要があります。
ユーザーが作成した分析コンテンツの検証と正確性の確認を支援する、プラットフォームの機能を利用する (コンテンツの検証)
ガバナンスのプロセスで決定されるとおりに、検証済みの分析コンテンツを一元管理された信頼される環境に利用拡大する (コンテンツの利用拡大)
コンテンツを信頼されるものとして認証し、同一の環境内の信頼されていないコンテンツと区別する (コンテンツの認証)
パブリッシュ済みコンテンツの利用状況を監視して監査し、信頼されていないコンテンツの利用状況を追跡する (コンテンツ利用状況の監視)

評価時の検討事項:
データスチュワードは、利用拡大のために評価中のコンテンツの正確性を検証する目的で、プラットフォームに保存されているベンチマークデータにアクセスし参照できるか
ユーザーが作成したコンテンツは、幅広い利用のために共有環境に向けて利用拡大させることができるか
利用拡大のプロセス中に参照元データソースは、すでにパブリッシュ済みの信頼されるリファレンスデータモデルにリダイレクトすることができるか
パブリッシュ済みの分析コンテンツにウォーターマークを付け、認証済みで信頼できるものとして示すことができるか
データスチュワードは、パブリッシュ済みの信頼されるコンテンツと信頼されていないコンテンツの両方で、利用状況が適切であることを確認するために、利用状況の指標を見て分析できるか

ガバナンスのプロセス全体を管理し実施するのは、主に IT/BI プロフェッショナルの責務であり、したがってその観点から分析環境のガバナンスに関連する次の項目を検討する必要があります。

評価基準: IT/BI プロフェッショナルは、次のことを行える必要があります。
パブリッシュ済みコンテンツを保存し整理する環境を構築および保守する (コンテンツ管理)
分析コンテンツのセキュリティを確保し、コンテンツタイプ、機密性、ビジネスニーズなどに基づいて、ユーザーに適切なレベルのアクセスを許可する (セキュリティ、パーミッション、アクセス制御)
組織の事業部門の全体で幅広い利用パターンを監視する (コンテンツ利用状況の監視)

評価時の検討事項:
環境をカスタマイズして、コンテンツの整理や全体的な管理に関する組織のニーズと希望に合わせることができるか
IT/BI プロフェッショナルは、既存のコンテンツ管理に対する投資を活用するために、組織のポータルを経由してプラットフォームのコンテンツへアクセス可能にできるか
特定の分析コンテンツへのユーザーアクセスを許可/拒否するために、詳細なレベルでセキュリティを適用できるか
データモデルのレベルで設定されたセキュリティを、ダウンストリームのすべての分析コンテンツで自動的に適用することができるか
環境の全体的な評価と利用法を管理者に知らせるために、利用のパターンと傾向を追跡して分析できるか

データが組織に与えることができるインパクトを完全に実現するには、従来の BI プラットフォームからモダン分析プラットフォームへの移行が必要です。モダン分析プラットフォームはセルフサービスとガバナンスを結び付け、信頼されるデータで組織全体がビジネスのインサイトを得られるようにします。そしてそうしたプラットフォームは、IT 部門が実行する従来の BIプラットフォームという古い殻を破るものであるため、異なる視点から評価しなければなりません。

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